悪寒戦慄、振戦

突然の心窩部痛・背部痛と四肢の震えを主訴に来院した中年女性。

上級医に

「どの臓器系統の疾患を考える?」

と問いかけられ、

「心窩部痛、背部痛に関しては心原性の疾患は否定してそれから…」

と言葉に詰まった。

 

心窩部痛・背部痛に関しては、

心原性の緊急疾患(大動脈解離、心筋梗塞気胸肺塞栓症…)の否定はもちろん必要だが、消化器系の疾患(急性膵炎、胆嚢炎(悪寒戦慄を伴うので、急性化膿性胆管炎?)、急性胃粘膜病変(AGML)、上部消化管穿孔、肝炎)や泌尿器系(腎盂腎炎、尿管結石…)も忘れてはいけない。

 

心、肺、胃食道、肝胆膵、ひとつひとつに関連した病歴聴取から当たりをつけていく。ただし、一個一個丁寧に聞いていたら時間がいくらあっても足りない。血ガス、エコー、レントゲンなど迅速に検査し、結果を知れるものからすぐにこなしていき同時に問診も進めていく。

 

振戦だけについて言えば、発生状況に基づいて、

・静止時振戦 (パーキンソニズム)

・動作時振戦 (アルコール依存症、アルコール離脱症、薬剤性)

・運動時振戦

・企図振戦 (小脳失調) 

・姿勢時振戦 (生理的or本態性振戦、突然発症ならば中毒性or代謝性or心因性

・複合振戦

に分けられる。振戦と一口にいっても種類は多彩。

薬剤性、中毒、離脱症状、パーキンソニズムなどはなかなか出会う頻度も少ないので忘れてしまいそうな要素ではある。

 

当の患者さんは結果的に症状も落ち着き、既往歴を聞くと右の腎盂結石があるとのことで、その痛みにより過換気→テタニーになったのか、と考えられたが…確信は持てない。救急外来で診断に自信を持てないまま帰すことなど往往にしてあることだ。